【131】 豚肉入り牛肉コロッケで またまた大騒動            2007.06.26
     − 変わっていない 業界体質と監督官庁の無責任ぶり −


 北海道苫小牧市の食肉加工販売会社「ミートホープ」(田中 稔社長)が豚肉などが混入したミンチを使って冷凍の牛肉コロッケを製造していたという食肉偽装問題で、新聞・テレビが大騒動である。
 ことは、コロッケ偽装だけに終わらずに、ハンバーグなどひき肉を使った食品全体に広がり、混ぜ合わせたのも豚肉だけでなく鶏肉やウサギの肉も入れていたとか、油身の白っぽさを赤身の肉に偽装するのに牛の血を加えていたなどの事実が次々と発覚してきた。混ぜ合わすための画期的な機械を作ったとして、北海道庁の推薦を受けた農水省は「攪拌(かくはん)機付きひき肉製造器の考案」などの業績を称えるとして、「創意工夫賞」を贈っている。田中社長は大いに勇気付けられて、攪拌に拍車がかかったことだろう。
 ミートホープ社は返品された冷凍コロッケを安く買い取り、賞味期限を改ざんして転売していた疑いなども発覚して、事件は監督官庁の北海道庁や農水省の責任を問う声も出始め、朝・昼・夜、どこのチャネルを回しても「食の安全」などとキャスターが叫んでいる。


 思い起こすのは、2001年、雪印食品が輸入肉を国産と偽って申請した偽装事件である。次いで日本食品、そして日本ハムの子会社の日本フーズでも同様の偽装が発覚…、雪印食品は売り上げの大幅減少などから会社解散に追い込まれた。
 牛肉以外でも全農チキンフーズが輸入鶏肉を鹿児島産の若鶏として納入するように指示。さらに食肉卸大手スターゼンが白豚に黒豚のラベルを張るなどの不正が相次ぎ、国民の食への信頼を薄れさせたとともに、大手メーカーだから安心という神話を一気に崩したのである。
 雪印食品の不正を告発した西宮冷蔵が倒産に追い込まれたことにも、この国の正義を守れない社会のしくみに深い失望感を味わった【参照@】のだが、こうした大きな犠牲を払いながらあれから6年、日本の食を取り巻く環境はなんらの改善もなされていないことを思い知らされ、改めて愕然としている。


 雪印の事件を受けて、当時、私は「偽装表示なんて朝飯前で、食品業界は何でもありだ」と書いた【参照A】。コシヒカリでないのにコシヒカリのラベルと明記されていたり、栽培農家が表示されていながら実際にはそんな農家が存在しなかったり、輸入牛肉が黒毛和牛として売られるのが、それほど珍しいことではない世界であった。
 大きな社会問題となって、その反省の上に業界の取り組みも社会の仕組みも改められたはずなのに、また全く同じ誤りを繰り返しているのである。しかも、昨今には、アメリカ産牛肉のBSEや遺伝子組み換え作物、中国野菜の農薬残留など、問題が国際的になってきて、より深く注意を注ぎながらの対応が求められるようになっている。それを、国内の食肉の大もとで6年前と全く同じ問題を起こし、大騒ぎしているとは、何という取り組みの甘さだろうか。
 業界の体質も劣悪に過ぎるというものであるが、監督官庁や農水省に責任の自覚がないのも困ったものである。偽装表示の食品の流通防止や外国産の食品の安全については、都道府県の生活環境課や保健所、そしてもちろん農水省がその責任を負わねばならない。赤城農水相の会見を聞いていても、マスコミの報道を見ていても、基本的にあるべき行政の管理責任が喪失しているのではないかという危惧を抱いた。
 

 この問題の再発を防止し、日本の食の安全を守るには、6年前と全く同じ主張を繰り返さなければならないが、やはり監督官庁の監視を強化し、責任を厳しく問うことだろう。
 松岡前農水大臣の自殺という激震に見舞われた農水省だが、ここは国民の食の安全を守る責任があるのだということをしっかりと自覚して、抜本的な取り組みをするべきである。監督管理機関を置いて業者の指導啓蒙を推進し、流通している食品の検査を常時行うことである。
 もうひとつ、責任を取らない公官庁・官僚・公務員の体質を一掃し、社保庁のボーナス返上を契機として、信賞必罰の就業体制を確立することも、公務員改革の主要な眼目である。


  「日本は、今」 トップページへ